石苔亭いしだの野の花の活け花を見ていている唐木さち先生がご来館されて、茶室にて野の花を活けました。朝6時に旅館を出発して、山に野の花を取りに行くところから始まります。唐木先生のお花は、自然にある草花をそのまま活けたような、とてもシンプルでいながら、生命感の溢れるお花です。だからこそ、野にあるときの姿が大切なってきます。
綺麗な草木ばかりかと思っていましたら、虫が喰って穴の開いた草木や、真っ赤に色づいた紅葉ではなくまだ若い緑の紅葉だったりしました。これは活ける花の中にも「今」と「過去」と「未来」を映しこむことにより、その奥行を更に深くするためだということを教えていただきました。
唐木先生が何気なく活けられる草木に、その花の命が感じられて心を打つのは、唐木先生自身がこの地の自然に心を寄せて、その命に何も飾りをつけずに活けられているからなのだなと思いました。花屋さんに売っている花を買ってきて花器に差しただけのものと、自ら山に入っていただいてきた草木との違いがここに出ているのだと感じます。
茶室の床の間に活けられた草木が、まぶしい朝日に照らされて私のほうを向いている姿に、しばらくの間見とれていました。私もこんな花が活けられるようになればいいなと思いました。