若旦那が昔同僚だった中学校の先生に頼まれて、堀金中学校へ和太鼓を教えにいったのは今から4年前のことです。先日、その堀金村の太鼓連の方からお電話を頂戴しました。
若旦那が教えた太鼓がまだ中学校の文化祭で打たれていて、作曲者の若旦那に見に来てほしいとのことでした。
体育館へ行くと当たり前のことですが、当時の太鼓チームのメンバーはみんな卒業していて新しい打ち手ばかりでした。とりあえずこれまでの成果の発表ということで、練習した曲を打ってもらいました。若旦那はなにも言わずに子ども達の太鼓を聞いていました。
それまで相当練習をしてきたのでしょう。4年前に若旦那が教えた打ち方や振りはほぼ完璧というほど忠実に再現されていました。しかし、子ども達の太鼓の発表を見終わると、拍手もせずに若旦那は子ども達を集めて話し始めました。
「この曲は村を吹きぬける北風をイメージした曲。みんなの音からは風の鋭さ、速さ、力強さが伝わってこない。1フレーズ1フレーズにどんなストーリーがあるのか話すからそれを今日は受け取ってほしい。」
「もっと体ごと太鼓にぶつかっていけ」
「ドンという音が太鼓の反対側の皮を突き破るくらい打ちぬけ」
「締め太鼓はもっと相手に音を届けないとダメだ」
厳しいばかりではなく、時には笑いも入れながら、若旦那が話しているうちに子ども達の目が、若旦那の一挙手一動に集中されていきます。若旦那がばちを振り下ろして響かせる太鼓の音は、子ども達の音とは確実に違うもので、その度に子ども達の目つきが変わっていきました。
十分とはいかないようでしたが、1時間30分ほどの練習を終えるころには、子ども達の太鼓の響きは、確実にそれ以前のものとは別物になっていたように私には聞こえました。
地元の太鼓連の方が「私達がいくら言ってもできなかったことが、なんで今日一日でこうも変わっちゃうんだろうねぇ」と言っていました。
堀金中学校の子ども達が文化祭でいい太鼓の発表ができることを私も祈っています。