<空間に内包されるもの>
視覚的な感動は3分しか持たないという話を聞いたことがあります。初めてご来館されますお客様は、たいてい玄関を入られますとロビーの能舞台に驚かれます。しかし、しばらく経つと、もう能舞台のことは忘れ、次の感動探しをされます。能舞台のあるなしはリピート客増加には決してつながりません。
「もの」には限度がありません。客室にカッシーナの何十万円もするチェアを入れても、それ以上高価なものをお客様がお持ちの場合もあります。ならば、それ以上のものがあればいいかというと、更にそれ以上のものはあります。チェアの対する価値観も人それぞれです。
ホテルと違って、旅館のいいところは、「人の気配をそこかしこに感じるところだ」ということを聞いたことがあります。それはプライベート空間を重視したホテルと大きく違うところです。人が関わるからこそ、旅館という空間が「もの」ではなく「こと」になっていきます。そして「こと」の感動は、「もの」の感動とは違い永遠に続きます。
今度できあがる旅館の中庭を眺めたとき私の目には、その中庭で楽しく談笑しているお客様方の姿が見えました。それは、バリのホテルでピアノの周りでカクテル片手に音楽に聴き入っていた人たちとオーバーラップしたものだったのかもしれません。
「プライベート空間の逆にあるもの」も、また魅力のある空間であると思います。さて、どんな中庭にしましょうか…。考え中です。
明日からは若女将の日記へ戻ります。
おわり