これまで私たちの考える「旅館においての滞在」とは、旅館の中においての滞在のみでした。
客室の露天風呂で誰の目も気にせず好きなときにお風呂に入ったり、静かな音楽の流れる図書室で日ごろ読むことのできない本をじっくり読んだりと、日常では味わうことのできない時間と空間を提供する・・・・。
いずれも日ごろの喧騒から離れ、ゆっくりくつろぐための一つの時間の過ごし方であると考えます。
しかし、あるお客様からずっと前にこんなお話を聞きました。
「本当に贅沢な休日の過ごし方は、午後の風に当たりながらボーっとすることだよ。」
「フランスへ旅行に出かけたとき、何が一番気持ち良かったことは、テラスで風に当たりながら、昼間からワインを飲むことだったかな。」
「何回もこの旅館に来てるけど、一番気持ちよかったのは、この村の夏祭りに出かけたときに感じた夜風かな。夜空に上がる花火を見上げながら浴衣で町並みを歩いたとき、頬に当たる風が気持ちよかったねえ。」
「風の薫り」の心地よさを感じていただくには、私たちの旅館ばかりですべてのサービスを完結させるのではなく、もっともっと私たちの旅館を取り巻いている信州の自然を取り込んだ「時間」と「空間」に目を向けていく必要があると思っています。