先日出かけた「若女将の会」で、こんな質問を受けました。
「石苔亭いしだでよく言っている『一流のサービス』ってどういう意味なの。」
なんとも漠然とした質問でしたので、その場では即答できなかったのですが、あれから自問自答しながら、今晩思っていることを書こうと思います。
私は旅館には旅館の、ホテルにはホテルのサービスがあり、大型旅館には大型旅館の、私どものような小規模の旅館には小さい旅館なりにできることがあるように思います。これを前提にお話いたしますね。
私たちの旅館でお客様に味わっていただきたい思いは、日ごろの疲れを旅館のゆったりと流れる時間と空間の中で癒していただきたい。そして明日からの生活やこれからの人生にとって、私たちの旅館でのひと時が少しでもお役に立つことができたならば、私どもにとりましてこれ以上の幸せはありません。
旅館での時間と空間が有意義なものとなる為には、スタッフの十分な知識も必要でしょう。気の利いた言葉がけも必要でしょう。料理の味や温泉の湯加減などももちろん必要だと思います。
しかし、それ以上に一泊二日お供をさせていただく私どもスタッフが、お客様とサービススタッフという関係から一歩踏み込んで、お客様の旅をより有意義なものとなるための『よきパートナー』であるかどうかという事が一番大切だと考えます。
先日、お客様のお誕生日をお祝いしようと若いスタッフが、いろいろ知恵をしぼって、お誕生日のデコレーションをしたことを紹介させていただきました。あの時のスタッフは、旅館のサービス的にどうだとか、自分の経験がどうだとかではなく、ただただお客様が喜んでくれるにはどうしたらいいかということだけを考えて行動しました。そのデコレーションが果たして美しかったか、お洒落だったかと聞かれれば、決してそうではなかったでしょう。
しかし、年に一度のお誕生日をなんとかお祝いしたいというスタッフの思いは、しっかりお客様に伝わり、翌日「また来るよ。ありがとう。」と言っていただけました。
お客様からの「おい」「お前」「早くしろよ」と声をかけられて落ち込むスタッフがいます。時には「もう、頭くるよね。私はお前じゃないっていうの。」と、感情をあらわにするスッタフもいます。しかし、そんな時私はこう言います。
「それは、まだあなたがお客様のパートナーとして認められていないからですよ。自分の旅を高めてくれるパートナーには、決してお客様は乱暴な言葉をかけません。」・・・・と。
どんなお客様も、旅を楽しみたい、もっと味わいたいという思いは一緒だと思います。一流のサービスとは、私たちスタッフもお客様と同じくらい、この旅を楽しんでいただきたいと思う心から、自然とこぼれるサービスだと思います。
今のところはそんなとこでしょうか・・・。