上村という村があります。12月には霜月祭りという全国的にも有名な湯立て神楽の神事が行なわれます。その時に付ける面は村の中で許可された2〜3人の人しか触れることを許されていないそうです。
私たちの旅館の中庭にも“和御霊〜にぎみたま〜”と“荒御霊〜あらみたま〜”の神様に来ていただいて元旦祭を行なっております。
旅館では口にしてはいけない3つの言葉があります。
一つ目は「政治」に関すること
二つ目は「野球」に関すること
三つ目は「宗教・神ごと」に関することです。
理由はお客様によっていろいろな考え方や解釈の仕方があるからです。日本という国は無宗教の国といっていいほど、殆んどの方々が宗教に対して深い関心はありません。そういう私自身もクリスマスでケーキを食べた後には、お正月でおせち料理といった具合に、いろんな国の宗教や文化を渡り歩きながら日々を過ごしています。
先日、テレビで「ラストサムライ」の映画を観ました。
日本人というのは常に自然に敬意の念と恐れを抱きながら上手く付き合ってきたのではないか。全てのものには魂がやどり、感謝の心を忘れないことが日本人の心の尊いところではなかったのかと、映画を観ながら思いました。近頃、毎日のように物騒な事件が起こっています。小さな野の花にも宿っている魂、米粒一つにも宿っている魂にも、心を寄せることのできる日本人の心をもう一度取り戻せたら、親や兄弟同士で傷つけあったり、簡単に人の命を奪うような事件はなくなり、私たち日本はもっともっと世界に誇ることのできる民族になるのではないかと思います。
霜月祭りという神事を通して、八百万の神々に感謝の気持ちを伝えている上村の皆さんに日本の心を教えてもらうことができます。そして私たち旅館でもまた、自然が与えてくれる一つ一つに神様が宿っているという心持ちを大切にしながら日々のサービスを行なっていけたらと素晴らしいと思っています。