若旦那と共にこの旅館へ私がこの旅館に戻ってきたのは、今から約3年前のことです。若旦那は、それまで小学校の教師をしていまして、旅館のことを何も知りませんでした。それなのに、その1ヵ月後には各グループのリーダーを集めて、いきなりこんなことを言い出しました。
「この旅館はダメな旅館だ。」
当時のグループ長はもの凄く怒りました。
「来たばっかりの人間に何がわかるんだ!」と。
しかし、時間をかけて話をしていくうちに、どれだけそれまでの私たちのサービスが旅館都合であったか、お客様第一という言葉が形だけであったのかが分かってきました。
「何年この旅館にいたからと言って、この旅館のいいところや病んでいるところすべてが見えるわけではない。逆に麻痺してきてしまう。ご一泊されるお客様には、なんとなくこの旅館いい感じだねとか、雰囲気悪いねといった旅館の匂いみたいなものは敏感に伝わる。俺は来たばっかりだから匂うんだ。」
「今の自分たちはゼロなんだと知った時から全ては始まる。今がサイコー。自分たちは完璧と思った時から、すでに衰退は始まっている。今がゼロならこれからいしだのサービスがなんなのか、探していけばいいじゃないか。」
若旦那の言っていることは無茶苦茶でしたが、複雑な思いが絡み合いながら、とにかくこの日からスタッフの手によるスタッフのトレーニングの準備が始まりました。
つづく
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