阿智川沿いの桜並木も葉桜となり、春の終わりを私たちに告げてくれているようです。10日前にこの桜の木の下で盛大に行なわれた「早座祭り」がまるで嘘のように、今夜は立ち並ぶ桜の木々もひっそりと息を潜めています。
今年の早座祭りのテーマは「日本一の村祭りをやろう」でした。早座祭りは昨年、昼神温泉から車で15分ほど離れた園原というところで行なわれました。園原には「駒つなぎの桜」という樹齢800年にもなる大木があり、その桜の木にこの村の五穀豊穣・里人の無病息災を祈願する春のお祭りを開催しました。人間国宝の茂山千作先生や、元宝塚の但馬久美さんなどもゲストとしてお出でいただき、大々的な春のイベントととなりました。
祭りやイベントを行おうとする時、そこには大きく分けて三者が存在します。
「村人」「演者」「観光客」です。
「祭り」と「イベント」の違いは何かという質問もよく出る質問です。
私は「祭り」とは村人と演者によるもので、「イベント」とは観光客と演者によるものだと思っています。そういった目線で見てみると昨年の早座祭りは、観光客と演者が楽しかった「イベント」でした。地元の皆さんは外から祭りを見に来る皆さんの案内で精一杯で、祭りに参加したり楽しんだり出来る状況ではなかったのが現状でした。
今年の早座祭りのテーマをあえてイベントではない「村祭り」にしようとしたのは、ここに住む村人がこの地の幸せを願わなければ、わざわざ春のお祭りをする意味がないと考えたからです。しかし、いろんな地方からやってくる観光客の皆さんにとって、村民によるこの村のためのお祭りというのは、実際仲間には入りずらいものです。なにか神社で盛り上がっているようだけど、覗いていいような、悪いような・・・。
そこで観光客の皆さんにも早座祭り当日には「村民証明書」を配布し、全員村民となっていただきました。各出店ブースでは一般価格と村民価格といった二重表示がされました。阿智黒毛和牛の串焼きは一般価格は1,200円なのに、村民価格は600円でした。「え〜村民じゃないんですけど・・・。」というお客様には「すぐそこで村民証明書もらって来て。すぐ村民になれるから」といった具合で、この日の村民人口は一時的に5,000人以上にも膨れ上がりました。
「日本一の村祭り〜ふたつめのふるさと発行します〜」このキャッチコピーを考えてくれたのは、私が小学校教師になって初めて教えた子どもが考えてくれたものです。昨年の早座祭りから祭りのスタッフとして遠くから他の教え子と一緒に駆けつけてくれています。
今年の早座祭りのクライマックスでは、地元の阿智神社の拝殿にて、名誉村民である茂山千作先生の狂言「福の神」を奉納していただき、神主さんの祝詞の後に、この日に村民になってくれた観光客の皆さんと、この村の住民が一緒になって、この村の幸せを願って手を合わせました。参列された皆さんの幸せそうな笑顔を見ながら、今年の早座祭りはイベントではない「村祭り」になったなと実感することができました。今年の早座祭りをこれから長く続くこの村の春祭りの一歩としていきたいと思っています。
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