日頃は観光客でにぎわうピッティ宮殿だそうだが、今日はその中庭で開かれるネオジャパネスクの「あい茶会」のため、中庭の中央にはロープが張られ昼間からリハーサルが行なわれた。長野県スタッフはこのあい茶会で出されるお茶菓子を担当する。
思い返せばこのお菓子を作るために幾度も試作を繰り返した。その結果できたのが干し柿とティラミスを融合させた今回の和菓子である。名前は「御玉〜MITAMA〜」という名前になった。
これだけ美味しいものが揃っていて舌のこえているイタリア人に受け入れられるかどうかが問題である。珍しいけれど美味しくないものは世の中にたくさんある。日本人としてOKでも世界には通用しない食品もたくさんある。
ここフェレンツェに来てあらためて思う。大切なのは本番でどれだけのパフォーマンスができたかではなく、本番までにどれだけ練りこんだものを作ってきたのか?積み上げてきたのか?削ぎ落としてきたか?ということである。「火事場のくそ力」という言葉が日本にはあるが、そんな言葉に期待する人間は信用できない。
厨房で和菓子の準備をしているスタッフの表情に不安げな表情は見られなかった。それは最初はイベントの為にお菓子を作っていたスタッフたちの目標が、今ではイベントに出ることが目的ではなく、職人として本当にいいものを作り上げるという、もっと高い目標に変わっていていることにあると私は思った。そしてその目標はすでに達成されている。スタッフの誰もがこの和菓子はイタリアの人々に気に入ってもらえることを確信していた。イベントはイベントでしかない。
いよいよあい茶会本番。木曽の漆器屋「ちきりや」の手塚さんが作ってくれた勾玉の形をしたお盆に和菓子と抹茶が乗せられお客様に運ばれていく。柿はイタリアでも「カキ」と呼ばれるほど日本の食材として認知されていた。その柿とイタリアのお菓子のティラミスを一緒にした今回のお菓子は、すべてのお客様に気に入ってもらえた。誰もが残さず和菓子を食べて「ボーノ、グラッチェ(美味しい、ありがとう)」の連呼だった。イベントに参加していたフェラガモの息子さんは大変この和菓子が気に入って5つも食べていた。
イベントを通して大切なことを学ぶことができた。
「あい茶会」の成功おめでとうございます。器づくり、和菓子の選定(これはいくつも候補があがり…わたしが、これだ!と思った団子の天麩羅が消えていったときには、ハラハラドキドキしてしまいました)のたいへんな論議と作成の末に、イタリアの人たちの絶賛を受け、とても嬉しいです。
若旦那のリポートを逐次、「和力」=加藤木朗のHPに掲載させていただきました。「和力」の活躍を素早くHPの訪問者にお届けすることができました。ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。
投稿情報: 加藤木 照公 | 2006年10 月18日 (水) 23:00
本物を身につけることの難しさは、和力の加藤木さんから教えてもらったことでした。大切なのは本番ではなく、その本番までにいかに積み重ねてきたものがあるのかということ。本番とはその積み上げてきたもの以上のことは決してできないということ。そして、本物とはその過程をきちんと歩んでこなければ手に入らないということ。そのことが今回のイベントを通して知ることができた気がします。
投稿情報: 若旦那 | 2006年10 月18日 (水) 23:00