当館のロビーに、毎朝、二本の火箸が吊るされます。
これは1年前に若旦那のどうしてもという願いで購入した「火箸の風鈴」です。姫路の52代明珍宗理さんが、刀剣などに使う「玉鋼」を用いて、若旦那の為に打っていただいたもので、石苔亭いしだというよりは、私たち家族の家宝となっています。
「サービス」や「真心」というものは、浮かんでは消えていく音色と同じようなもの。それを成しているときには、すでにそれは消えていっている。だからこそ、その時その瞬間にすべてをかけなければいけない。
この火箸の風鈴は、この旅館が「本物のサービスとはなにか・・・」という、私たちの旅館にとって最大の壁にぶつかっていたときに、なにも飾り気のない玉鋼の風鈴の奏でる、わずかに触れ合うことだけでも奥ゆきのある今までに聞いたことのない音色が、私たちの心を打ち、旅館のサービスの足元を見返すきっかけとなった、大切な風鈴なのです。
お客様をお迎えするとき、そしてお見送りさせていただく時のみ、ロビーに飾ってあります。お客様自身で是非とも火箸の風鈴の音色をお楽しみくださいませ。
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