石苔亭いしだの第2ロビーには暖炉が置いてあり、薪のパチパチとはぜる音がなんとも心地よく響いています。
この暖炉を作ってくださったのは千葉のアインズという工房の松岡さんです。先日、若旦那に連れられて松岡さんのギャラリーへ行ってきました。松岡さんは鉄・木・ガラス・布・・・といった素材に心を寄せて作品を作っていらっしゃるアーティストの方です。暖炉ばかりではなく、鉄で作った壁掛けや、自然木やガラスを使った行灯などギャラリーには様々な作品が所狭しと並べられて亭テ、見ているだけで楽しい気分になりました。
しばらくすると松岡さんは、奥の方から大事そうにあるものを持ってきて見せてくれました。それはそばの田んぼの土手に無造作に捨てられていたという鍬(くわ)の先でした。鍬先の鈍く光る鉛色の鉄と中心部分の木製の部分が、なんとも言えない緩やかな曲線で交わっていて、鉄と木といったぜんぜん違う素材が、農具というひとつの目的のために、必然性を持って融合している美しさがそこにはありました。人間が美しさを求めて作った造形物ではなく、長年培われるうちに、より機能的に、より効率的に洗練されてきたこうした生活の中の道具には、それだけで既に美しさが存在するのだなと思いました。
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