日本を出て来る前に、お花の唐木さち先生から「風」のお話を聞いた。日本のおもてなしは、そこに風がなければならないという話だった。今回の旅で、私はこの「風」について考えてみようと思っている。
日本の言葉で「風」を用いた言葉などがたくさんある。
風合い・風格・風采・風流・風情・風味・風体・風姿花伝・花鳥風月・・・。
石苔亭いしだが大きく変わるきっかけとなった言葉は、今から7年前に取材で訪れた東京カレンダーの平澤さんから聞いた「石苔亭いしだで一番気持ちのいい時間は、露天風呂で山を見ながら風に当たっているときだね。」という言葉だった。
石苔亭いしだの音響をプロデュースしてくださっている矢島さんは、私に風の心地よさを伝えるために、湘南の海へ連れて行ってくれた。唐木先生との出会いのきっかけともなったイベントの五感で愉しむ客室テーマも「風」であった。それぞれの客室に「風」を感じることのできるデッキや外庭を作ったのは二年前のことだ。
こう振り返ってみるとここ数年、私は「風」とずっと向き合いながら石苔亭いしだのあり方を考えてきた。だからこそ、日本を出発する前に唐木先生から聞いた「人と人の間にも風は流れている、その風はその相手によって異なる。相手がどんな風を送ってきてもその風を受け止め、どんな風を送り返すことができるかが「日本のおもてなし」ではないですか?」という言葉に敏感に反応できたのだと思う。
ここペナンは毎日カラッとした温かな風が吹いている。その風のおかげで人と人の間に流れる風もどことなくやんわりとしているような気がする。夜のバーで一人カクテルを飲んでいると、イラン人のビジネスマンが生バンドの演奏に合わせて陽気に踊り出した。そこからも風は吹いているのを感じた。この旅の間になにかを見つけて帰りたいと思っている。
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