朝食を終えてプールサイドでこの日記を書いている。私たちが滞在しているのはペナン島でも比較的リーズナブルな価格の大型ホテルである。改装を数年前に終えたばかりだそうで、部屋の造りも清潔感があって好感が持てる。ホテルスタッフも積極的とまでは行かないが、笑顔を絶やさず温かな雰囲気でもてなしてくれる。
こういったリゾートホテルに来ていつも感じることは、そのホテルが高価なホテルでもチープなホテルでも、お客様に提供したい時間と空間はなにかという基本的なポリシーが皆共通しているということだ。
大小の差はあるものの、お決まりのようにプールがせっちされており、ロビーでは毎晩バンドの生演奏をBGMにカクテルを飲むことができる。ルームサービスは24時間でナイトラウンジは夜中までOPEN。個々に違うお客様の時間の流れを24時間ストップさせないための仕組みが当たり前のように備わっている。
よく友人やお客様から「旅館は大変だね。24時間休むときがないんだから。」という言葉をかけてもらうことがある。
いや、日本旅館は夜は休んでいると思う。
旅館サイドの時間の枠にお客様をはめこんでいる。チェックイン〜お部屋へエスコート。ここまでは同じ。その後リゾートホテルではプールやラウンジに繰り出すところだが、日本旅館には“温泉”があるので、それがとって変わる。その後からが旅館の押し付けの本領発揮となる。
まずは選ぶことのできない夕食時間。料理に選択性はない。好きなものを好きな時間に食べるというリゾートホテルとは大きく異なる。夕食の後、部屋に戻ると布団が敷かれている。日本の布団は床に敷くため布団を敷かれてしまうと客室内での自由はほとんど奪われる。ロビーに出てみるとフロンとカウンターにはもう誰の姿もなく、ルームサービスも板場が帰ってしまったと言って断られる。もう“温泉”にでも入るしかなく、客室に帰ったところで地方の面白くないテレビを布団の上にあぐらをかいて見るくらいしかない。結局、日常よりも早く眠りにつくことを余儀なくされる。
「おもてなし」という日本の言葉はとても曖昧な言葉である。だからこそ追い求めていけばどこまでも深いものになると思うし、逆にどこまでも手を抜くこともできる。日本は観光立国という海外からの誘客を目的とした様々な施策をここ数年行なってきている。「旅館=RYOKAN」を世界でも通用する言葉にしようというプロジェクトも耳にしたことがある。
ある意味、そういった日本旅館の「押し付けのサービス」も、世界の中でも稀なサービスとしてエンターティメントとなる部分もあるのかもしれない。しかし、現在それぞれの時間のすごし方が多様化している中で、旅館のあり方についてももっと考えなければならいと感じた。
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